障がいのあるお子さんとコミュニケーションを楽しもう(その3)

ひのみね支援学校のコミュニケーション指導について(その3)
徳島県立ひのみね支援学校 山田千代

 今回は,言葉の表出がまだ見られない子ども達が気持ちを伝えるために,学校で使用しているコミュニケーションツールの一部を紹介します。
 1つ目は,具体物です。「○○したい」を伝える場合,具体物はおもちゃであったり,絵本だったり,時には活動を表すグッズであったりします。例えば,スプーンは「食べることを表すグッズ」として用いることがあります。スプーンはごはんやスイーツなどを食べる時に使う物であり,なくてはならない物です。活動を表すグッズは,その活動でよく使われる物や,関わりが深く象徴的な物を用います。しかし,大きな物の場合は目の前に提示することが難しくなるため,ブランコの下にいつも敷いているオレンジの布を,ブランコを表すグッズとしたり,あるいは,その活動時に歌っている歌を,ブランコを表すものとしたりします。
 また,本校のスヌーズレンルームには実物の素材の感触を再現したウォーターベッドのミニチュアがあります。このようなミニチュアも活用できます。その他,具体物をカードに貼り付けて使いやすくしたものも活用しています。

<ミニチュア(ウォーターベッド)>
<具体物カード>

 具体物は見えにくさのあるお子さんにとっても手で触ることができるため,形や材質などを手掛かりにその物を思い浮かべることができます。音の出る物も,その音を手掛かりとして具体物を思い浮かべることができます。

 2つ目は,写真カードや絵カードです。具体物と写真や絵との見本あわせ(マッチング)ができるお子さんは,これらを用いることが可能となります。写真カードは,具体物と写真とのマッチングがしやすい利点があり,写真に写っているその物を限定して示したい場合に使うと効果的です。一方,絵カードは,その絵が表す物を限定しないため,「『大きなかぶ」の本が読みたい」という伝え方ではなく,「本が読みたい」という伝え方になる利点があります。

<写真カード>

 教員が用意したカードの中にしたいことがない場合もあるので,「どれもちがう」,「どれでもいい」などのカードを用意することが必要となります。
 カードは指さすことで「これがしたい」を伝えることができますが,指さした時に伝えたい相手が見てくれなければ,せっかく伝えたのにコミュニケーションがつながらなくなります。そのため,伝えたい相手にカードを手渡すことを学習する場合もあります。手渡すことで「何を」伝えたいか,「誰に」伝えたいかが,行動として明確に表れることになります。ただし,動きに制限のあるお子さんの場合は,カードを視線で選んだり,教員が1枚ずつ「これ?」と尋ねた時に,そのお子さんなりの表出方法で伝えたりもしています。
 また,文の理解が育っているお子さんの場合は,下の『絵カード①』の取り外しのできる黒いボードに,複数のカードを貼って「iPad,ください」などのような文カード(『絵カード②』)を作って伝えたりしています。

<絵カード①>
<絵カード②>

 シンボルを理解しているお子さんはシンボルカードも活用でき,文字が読めるお子さんには文字カードを使うことができます。
 その他,言葉を聞いて少しの間,覚えておくことのできるお子さんの場合は,指で選択肢を示して選んでもらうこともできます。「(最初に,親指のみ立てて)本がいい?」,「(次に,人差し指を立てて)iPadがいい?」,「(最後に,中指を立てて)お出かけがいい?」などのように尋ねる方法もあります。言葉の代わりとなるカードが近くにない時や用意しているカード以外の選択肢を示したい時などに,指が活用できます。

<シンボルカード>

 

 本校ではこのようなコミュニケーションツールを用意し,活用の仕方を身につけさせたり,伝えたいという気持ちを育てたりしながら,子ども達からの主体的なコミュニケーションを育てていきたいと考えています。しかし,言葉に代わるものはコミュニケーションツールだけではありません。表情や少しの身体の動きなども,子ども達にとっては言葉に代わるものです。言葉に代わるものをたくさん増やしていきながら,コミュニケーションの世界をこれからも広げていってほしいと願っています。