~ひのみね支援学校のコミュニケーション指導について(その1)~
徳島県立ひのみね支援学校 山田千代
本校にはたくさんの肢体不自由のお子さんが通われています。子どもたちは肢体の不自由さがあるために受け身的であったり,自分からいろいろなことを伝えたくても伝えられなかったりすることがあります。コミュニケーションは,生活する上で必要不可欠な営みであり,相手と自分が言葉で気持ちを通わすキャッチボールです。
しかし,受け身的なかかわりの中で過ごすことの多い肢体不自由のあるお子さんにとっては,自分から発信する機会が少なかったり,自分でやってみようとする力が育っていなかったりすることが見受けられます。コミュニケーションを楽しむためには,自分から発信する力を育てることが大切です。やってみよう,やってみたい気持ちを育てるために,本校では支援機器を用いた活動を学習の中に取り入れています。今回はその一部を紹介します。
~自分からやってみようとする気持ちを育てるために~
まず最初に,その子にとって「とっても好きな活動」を見つけて用意します。自分から何度もしようと思えるほど好きな活動。できれば人にお願いしなくても,自分で行うことのできる活動を・・・。
次に,スイッチを入れると,好きな活動の動きを手助けしてくれる支援機器を準備します。例えば・・・
<ウゴキんぐ>
- 電化製品の電源を制御できる。
- 数種類の動かし方あり。
- スイッチを押している間だけ動かす機能
- タイマー機能
- 1度スイッチを押すとON,もう一度押すとOFFになるラッチ機能
- ボタン式のON/OFFがついている電化製品であれば使用可能。
<BDアダプター>
電池で動くおもちゃをスイッチで操作できるようにするためのアダプター。
ニッパーなどでおもちゃの乾電池ボックスに,BDアダプターの線が通るぐらいの穴を開けます。そして,乾電池の端に銅板が接するように差し込めばOK。
そして,スイッチを選択します。スイッチを入れたことが音や感覚で返ってくる方が,自分が動かしたことがわかりやすくなります。例えば・・・
<棒スイッチ>
軽い力で発泡スチロール部分を動かすとスイッチが入る。カチッと音がする。
<ジェリービーンスイッチ ツイスト>
- 軽く押すことでスイッチが入る。カチッと音がする。
- 表面が下に動いて止まる感覚が感じられる。
その他,紐を引っ張って入力するスイッチや,表情や指のわずかな動きで入力できるスイッチなどもあります。
最後に,活動に使う道具を支援機器やスイッチにつなぎます。例えば・・・
- ミラーボール
- バブルチューブ
- カラフルな光がキラキラ。
- 泡の音や回転音あり。
- フットバス
- 足浴,手浴でリラックス。
- 入浴剤を入れると匂いも。
- 泡や振動も感じられる。
- ドライヤー、扇風機
- 強風~弱風、冷風、温風あり。
- 風が好きな子にはピッタリ。
- ミキサー
- 振動、音あり。
- できあがるとジュースをゴックン。
- カセットデッキ
- 好きな音楽が流れる。
- 音楽好きにはピッタリ。
- 甘い匂いが漂う。
- 口に入れるとすっと溶けてなくなる。
- スイーツ好きにはピッタリ。
- 音や音楽が流れる。
- 踊ったり、動いたりする。
- 光もあり。
※その他、市販の物を改良したり太鼓たたき器などスイッチで動かすことのできるものを手作りしたりして、活用することもあります。
道具がそろったら,次は,遊ばせ方。
まずは,「スイッチを入れるとこんな遊びができるんだ」ということを,体験を通してわかってもらいます。
大人がやってみて,次に子どもたちと一緒にやってみて,こう動かすんだよという体の使い方を伝えます。その際には,体のどこが楽に動かしやすいのか?というところを見つけていきます。スイッチを押すことに努力を要するよりは,今見られている体の動きでスイッチを操作することができたら,遊びをより楽しめます。操作しながら遊び方がわかってくることもあるので,どんどんやっていきましょう。
その時に,子どもからの動きを引き出すコツは短く遊ばせることです。1回の遊ぶ長さが長いとそれで満足してしまい,「もう1回やりたい。」「スイッチを押してみよう」という気持ちが生まれにくくなったりします。ちょっと楽しんだところで終わるように,長さをセッティングします。
もう一つのコツは,どんな好きな活動であっても飽きることがあることを大人がわかっていることです。興味をもって遊べるように,遊び方に強度をつけたり,いろいろなことを組み合わせたりしながら楽しめるように変化をつけることが必要です。
「やりたい」と思える活動を通して,子どもたちの発信する力をどんどんと育てていく活動を一緒に楽しんでみてください。