障がいのあるお子さんとコミュニケーションを楽しもう(その2)

ひのみね支援学校のコミュニケーション指導について(その2)
徳島県立ひのみね支援学校 山田千代

 子ども達と心が通い合い,コミュニケーションがどんどん続いていくことはとても楽しい時間です。言葉を発しない子ども達であってもいろいろなことを受け止めて発信しています。今回は,そんな子ども達の中でも思いはあっても意思の表出がまだ自分では明確になっていないお子さんのコミュニケーション指導について紹介します。

 日ごろから,障がいのあるお子さんと関わられている方は言葉がなくても,表情やちょっとした体の動きなどから「そう思っているんだね。」,「これがしたいんだね。」と気持ちを汲み取って,子ども達とのコミュニケーションを進めているかと思います。手を挙げるなどの明確な意思表出がなくても,子ども達のわずかな動きを捉えて気持ちを推し量り,やりとりを行っていることでしょう。
 本校でも同じようなやりとりが行われています。今回はコミュニケーションの基礎的な力を養う取組の1つを紹介します。

 例えば,歌が大好きで,唇を動かすことのできるお子さんの場合・・・

○○くん,今から大好きな「さんぽ」を聞くよ。この歌だよ。

あ,あの歌だ。

~最初に,これからすることを,何をするかをその子にわかりやすく伝えます。教員がやって見せたり,一緒にやってみたりしながら体験することもわかりやすくする1つの方法です。~

そうそう,この歌よ。
○○くん,「さんぽ」聞く?

あ,先生,何か言っている。
(口を動かす)

○○くん,口で返事したね。
「さんぽ」かけるよ。

やった~
(口を動かす)

~この時はまだ,子どもが口を動かして「はい」と返事したかどうかは定かではありませんが,まずは教員がそうなんじゃないかなと受け止めて応答します。~

嬉しいね~。
もう1回「さんぽ」聞く?

あ,先生が何か言っている。(口を動かす)

口で返事したね。(口を触りながら)ここを動かしたね。ここね。
じゃあ,「さんぽ」かけるよ。

あれ?口を動かすと「さんぽ」が聞こえる・・・。

~動かしたところを触ってあげると,ここを動かしたんだということが子ども自身にフィードバックされます。ただ,触られるのが嫌な子もいるので,そのような場合は慎重に対応します。~

ねえねえ,もう1回「さんぽ」聞く?

歌,聞きたいなぁ。
口を動かしてみよう。

 このような関わりを繰り返しながら,次第に簡単な因果関係(~したら~になった)を理解していきます。口などを動かして「したいよ」,「はい」を表せるようになると,同じように,口を動かさなかった時に教員が「したくないんだね」,「違うんだ」のように受け止めることで,「いいえ」の伝え方についても学んでいきます。そうして,「はい」-「いいえ」が明確になってくると,複数の選択肢の中から「これにする」と選ぶことができるようになり,子ども達の気持ちの伝え方も広がっていきます。

 意思表出の基礎的な力を学んでいる子ども達にとっては,コミュニケーション相手はとても大きな存在です。関わる大人はどのような場面なのか,今何が起こっているのかという背景や周辺の状況の文脈を把握した上で,子ども達のちょっとした表情や動きの変化を敏感に感じ取りながら気持ちを想像したり,推し量ったりすることが必要となります。子ども達の気持ちを受け止め,汲み取りながら楽しくコミュニケーションできる相手になりたいなぁ・・・と思う毎日です。